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10月の上旬だったろうか。俺、パンク好きなんスよぉ。これでもヘソピー、ハナピーだったんス。あ、もちろん安全ピン。と和泉さんが言ったから、じゃあピストルズのビデオ今度あげるね。それで10年以上しまい込んでいた“The Great Rock’n Roll Swindle”を棚の奥から引っ張り出した。 1・2度しか見てないそれを、これが最後と見直してみる。この映画をつくったピストルズのマネージャー、マルコム・マクラレンも本人の役でフリークの秘書を従えて登場している。 映画としての完成度はよくわからないけれど、当時のギグの様子やメンバーのインタヴューがアニメーションも交えて撮られている。 ステージの上でツバを吐き、洟をかみ、どこかフリークのような動きで歌うジョニ―・ロットン。その一方で「民主主義には、お偉方をぶっとばす権利がある。」と、ビール片手にブラックスーツでインタビュアーに悪態をつく21歳のロットンの、その静謐な聡明さに改めて感動する。
そしてもう1本。ピストルズ1978年、最初で最後のアメリカツアーをおさめた『D・O・A』。“Swindle”が事実に見せかけたフィクションなら、こちらはピストルズを中心にしたロンドン・パンクのドキュメンタリー。そこにはピストルズの演奏の事実が…、それでも彼らは今も伝説のパンク・バンドだ。パンクのアイコン、THE SEX PISTOLS。
ダダイズムからシュールレアリスム、更にその流れの先に位置するパンク・ムーヴメント。それはマルコム・マクラレンが周到な調査を基に意図的に巻き起こしたものだと、よく知られている。その思惑通りか、それ以上か今もネットを検索すればピストルズ、とりわけ、この頃のロットンの過激なカッコよさを賞賛する声は数多い。 『D・O・A』で面白いのはUKではチケットを買う金すらないティーンエイジの代弁者として熱狂的な支持を得たピストルズをアメリカでは、それよりも裕福でアートなんかにも興味がありそうな層から注目されていたこと。
メンバー全員のビザを発行しないように米政府に圧力をかける英政府。「ピストルズに音楽的価値は無いよ。これはイギリスの政治現象だ。ここにいる連中はみんなダマされているんだ。」と音楽関係者。「どうせ金でしょう…我々は勝利しますよ。」そう断言するロンドンの議員。 「パンクは処置なしね。かつてないほど退廃的で反動的な哲学だわ。子供たちは苦しんでるのよ。」諦め顔のインテリ老婦人。パンク・ファッションに身を包み「ここにいると誰の目も気にならないの!」上気した顔で叫ぶ少女。 サン・アントニオでの公演中、ロットンの顔に客席から投げつけられたケーキが命中する。シド・ヴィシャスが、からかう男をベースで殴ったのは、その直後のことだ。 映画も終わりの頃、インタヴュアーはドラッグで意識朦朧のシドにロットンの目的は一体何なのかと尋ねる。政府転覆だろうかと。
ロンドン・パンクの創造主マルコム・マクラレンは、後に「最も汚いものが最も美しいものになった。」と自らの業績を讃え、同時に裁判でも争ったロットンを唯一、自分の予想をはるかに越える存在だったと告白している。
こうして来る日も、来る日もビデオを見続けるある日、ジョニ―・ロットン改め51歳のジョン・ライドンが、どこかのコンサートでシャツを、はだけ観客に向かって叫んだと誰かのブログに見つけた。
「オレの、このビール腹を愛せ!」
Johnny Rotten, King of punk. …あぁジョニ―全て了解。パンクとはカッコイイことでは無いのですね。パンクとは他者との差異を認めること。そして何ものも矯正しようとしないこと。 和泉さんが、俺。パンク好きなんスよぉ。と言ってから、もう何日経ったんだろう。今年も、もう暮れてゆく。
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